留学・短期留学

免疫・代謝内科学分野では、海外での研究・臨床に関する留学を積極的に取り組んでいます。これまでに留学された多くの先輩方の中から、最新のレポートをご紹介していきます。

留学記

【82期】河野 通仁(こうの みちひと)

 width=

George先生と

私は2015年7月から約3年間BostonにあるHarvard Medical SchoolのBeth Israel Deaconess Medical Centerに留学させていただきました。

 

留学を決意したきっかけ
私は医師となりしばらくは将来像としては臨床医しか考えていませんでした。しかし医師4、5年目の頃から現在の医学では如何ともしがたい場合が多々あることを感じ、研究の重要性を感じるようになりました。さらに医師6年目頃から大学で基礎実験を始めるとScienceの面白さも徐々にわかるようになりました。また父が難病を患い他界したことも臨床だけでなく早期診断や新たな治療に結びつく基礎研究もしたいと強く思うようになった理由のひとつだと思います。幸運にも渥美達也教授のご高配を賜り、BostonにあるHarvard Medical SchoolのBeth Israel Deaconess Medical Centerへの留学のお話をいただきました。医師として研究者として人としてまだまだ未熟な自分を鍛え、より人の役に立つことができるようになりたいと思い留学を決意いたしました。

留学生活について
私が留学した研究室はDivision of Rheumatology のGeorge C. Tsokos教授の教室で、主に全身性エリテマトーデスの研究をしています。私は自己免疫性疾患におけるT細胞の細胞内代謝の研究をしました。細胞内代謝がT細胞の分化や機能に関わること、自己免疫疾患の新たな治療ターゲットになりうることが明らかになり、日々わくわくしながら実験をすることができました。研究室のメンバーはTsokos教授の他スタッフが3名、ポスドクは15名前後いて、非常に活発な明るい雰囲気で、研究においても皆協力しあっています。Tsokos先生はギリシアのご出身ですが、その他にもスペイン、イスラエル、ハンガリー、インド、中国、韓国など非常に多国籍な実験室です。アメリカではホームパーティーやBirthday partyなど家族皆で集まるイベントが多く、家族ぐるみのお付き合いをさせていただける友人も増えました。

 

留学中に次男が病気でBoston Children’s Hospitalに入院しました。幸い後遺症もなく元気になりましたので、今となっては全米子供病院No.1に選ばれている同病院の医療を家族として間近に感じることができ、とても良い経験になったと思います。3泊4日の入院にもかかわらず、未保険だと総額3万ドル以上の請求となり(幸運にも大部分に保険が利きました)、日本とアメリカの医療制度の違いをまざまざと見せつけられました。また、病院には中心静脈カテーテルまで挿入できる資格をもった専門看護師がいて、子供の末梢ルートが難しい場合はすぐに院内待機の専門看護師に電話してルートを入れてもらうことができるなど、それぞれが高い専門性をもっていることや看護師でも可能な手技の広さに驚きました。

 

これまで日本にいると当然のように思っていたことがアメリカでは違うことが多々あり、日本とアメリカのそれぞれのいい点、悪い点を感じることができとてもいい経験になっています。また世界中からポスドクが集まっており、様々な国々の文化を知り、世界中で起きている出来事について他人事ではなく感じられるようになりました。留学中は研究についていろいろと学んだだけでなく、世界中から集まっている優れた研究者や、多種多様な職業の方々とも交流を深め、日常生活でも多くのことを吸収することができました。間違いなく、これまで生きてきた中で最も刺激的で一生心に残る3年間となりました。

最後になりますが、このような機会を与えてくださいました渥美教授をはじめ、お世話になった多くの方々にこの場をお借りして厚く御礼申し上げます。留学中に学んだことを今後の臨床、基礎研究に活かし、日々精進していきたいと思います。

width=

Tsokos lab メンバー

留学・短期留学アーカイブ